派遣先から直接雇用の提案。受ければ人生ゲームオーバー?

派遣先から直接雇用の提案を受け、迷うれいか(派遣ガールズイラスト)
れいか
派遣先から「直接雇用させてくれないか?」と言われたのですが、給料が派遣社員のときより下がるみたいです。それにどうやら「直接雇用」と言っても契約社員みたいで、受けるべきか悩んでいます?
酒井先生
派遣先からの直接雇用の提案はほとんどの確率で「契約社員」の登用を前提としています。まずその雇用形態について派遣先に確認してから判断しましょう。仮に「契約社員」としての直接雇用の場合、よく考えてから引き受けるようにして下さい。また派遣先は派遣会社が派遣社員へ支払っている正確な時給に関して知り得ないため直接雇用後の給料を意図せず安く設定してしまうこともあります。
れいか
なぜ派遣先は「契約社員」による直接雇用を進めたいのでしょうか?
酒井先生
特に事務の派遣社員は女性です。一般的に「女性の転職が難しい」と言われる理由は、結婚や妊娠といった人生のタイミングで退職する人が多いからです。派遣社員を直接雇用させるには派遣会社へ紹介料を払う必要があるのですが、せっかく自社の社員として受け入れても1~3年以内に辞められてしまうと非常にリスクが高いため正社員ではなく契約社員による直接雇用を進めたいのです。

引き受けたら最後「直接雇用」の実態

長期で働いていたり派遣先からの評価が高いと直接雇用の提案を派遣先から受けることがあります。

なぜ派遣会社に言わずあなたに直接提案するかというと、派遣会社を通してしまうと紹介手数料が発生してしまうからです。見込み年収の20~30%が紹介手数料の相場とされており、例えば年収300万円であなたを雇い入れようとしている場合、60万円~90万円の紹介手数料を派遣先から派遣会社に対して支払わなければいけません。それを避けるために派遣先は派遣会社を通さず内々で手続きを進めたいと考えているのです。簡単に言うと「引き抜き」です。

しかし、派遣先は今現在あなたに支払われている派遣会社からのお給料(時給)を知らないため、月額による給料よりも低い金額を提示されることはしばしば起こります。同様に、派遣先が派遣会社に支払っている派遣料金や、そこから抜いている派遣会社のマージンはあなたも知らないのではないでしょうか(契約書に記載されていますが覚えていないと思います)。この金額は契約の範疇なので上下ばらつきがありますが、実は結構高額な派遣料金、マージンが抜かれている・支払われていることもあります。

従って、本来はこの三者間で交渉した金額でないと誰かが損をしてしまうことになるのです。今回の例で言うと、派遣社員であるあなたと、派遣会社は損をしてしまいます。いくら派遣法により引き抜き行為が禁止されていなくても、派遣先だけが利益を得ようとしている実態では、今後あなたがそこで働く上で搾取され続ける危険性も伴います。

直接雇用後の条件が合わないときは、自分で派遣先に交渉するのではなく派遣会社を介して交渉するようにしましょう。派遣社員を雇用しているのは派遣会社のため、派遣先と内々で話を進めることは派遣会社との信頼関係にも関わります。

引き抜き行為は派遣法上禁止されていない

派遣法や各種関連法によれば、派遣先による派遣社員の引き抜き行為自体は禁止されていません。派遣労働者に係る雇用を制限する契約の定め(ここで言う「引き抜きを禁止する」「派遣先を介さなければならない」などの定め)は、労働者の職業選択の自由、就業機会を制限し、労働権を侵害するものとなるからです。

派遣会社としては面白い話ではありませんが、実態としてこうした引き抜きをすれば派遣会社と派遣先の関係が崩れるため、長い付き合いがあるような会社間だと起こりません。

つまり、引き抜きを考えるような会社というのは、中小の怪しい会社、イケイケドンドンなベンチャー企業、新しく派遣の契約をした会社など、その実態がよく分からないところが多い印象です。なので、派遣会社を介さず(隠そうとしながら)あなたに直接雇用を提案してきた場合は、そういった体質の企業であると疑いの目で見るべきです。

例えば自分以外に何人も派遣社員が働いているような職場や付き合いの長い企業では、派遣会社の営業マンが日頃出入りしており、また他の派遣社員の目にも留まるためあなただけ引き抜き行為をされることはありません。

雇用形態を確認!「契約社員」の場合引き受けてはいけない

直接雇用とは、「間接雇用」の対義語。つまり派遣社員以外の雇用形態(正社員、契約社員、パート・アルバイト)を言います。

「直接雇用させてくれないか」と派遣先から言われた場合、当の本人は「もちろん正社員としての雇用だろう」と思うはずですが、残念ながら契約社員としての雇用を想定しています。

あまり知られていませんが、「契約社員」とはこの世で最も安定しない・社会的地位の低い雇用形態だと言われています。世間的なイメージではなく、これは実態のお話です。詳しくは以下で解説しています。

派遣先から直接雇用の話をされたら条件面・雇用形態を詳細に伺い、まずは一旦保留にしましょう。その後、派遣会社の営業担当へ伝え自分一人では抱え込まないこと。給料が安くなるようであれば、営業担当からの交渉で改善されることもあります。また直接雇用後に契約社員から正社員になる明確な条件や、あるいは最初から正社員として雇用できないか、期間まで明確に聞くよう求めて下さい。

直接雇用の提案を受けたら新しい派遣先を探しておく

仮に直接雇用の話を断ってしまった場合、派遣社員としての有期契約を次の更新で切られる可能性が非常に高まります。

そのため断る前提で話を進めるなら、新しい派遣先を探しておき万が一の状況に備えることが賢い対策と言えます。契約期間を満了していると、不当解雇を訴えるのも難しくなるため、前もって先手は打っておきましょう。

正社員を目指すなら条件の合う紹介予定派遣や直接雇用前提の無期雇用派遣に応募する

もし派遣先から直接雇用の話をされて条件が合わなかった場合、これを機に正社員を前提にした紹介予定派遣に挑戦するのも1つの手段です。直接雇用されるぐらいの力が付いている証拠でもあるので、派遣会社もあなたを信頼できる派遣スタッフだと認識しているはずです。

正社員を望まなくても、「派遣先から直接雇用の提案を受けた」というのは派遣社員としてこの上ない外部評価になります。今後は今以上の高時給案件を紹介してくれ、時間もお金も自由になるはずです。また紹介予定派遣の場合は、直接雇用を前提とした派遣先による「選考」なので、今回のように派遣会社が紹介手数料をとりっぱぐれるということはありません。

このように直接雇用の話を断ったからといってあなたに不利になることはなく、むしろ前向きにとらえられることだと覚えておきましょう。

また最近特に派遣会社が進めているのは直接雇用を前提にした無期雇用派遣です。例えばテンプスタッフのファンタブルなら、一般的に言われている無期雇用派遣のデメリットを解消した取り組みになっています。

直接雇用は条件が合わなかったらキッパリ断る

契約社員で直接雇用されてもほとんど良いことはありません。派遣社員より給料が下がってしまったり、労働環境がかえって悪化することの方が多く、あなたを苦しめる結果になります。また契約社員は派遣社員と比較したら正社員への近道だと思われていますが、最も正社員への道が遠い雇用形態です。

契約社員として5年以上働くと無期契約に転換させなければいけない制度はありますが、5年経ったら契約を打ち切るなど会社側に主導権がある以上、この制度はあってないようなものなのです。

また派遣社員であれば紹介予定派遣から正社員を目指す方法もあります。派遣先によっては派遣社員より契約社員で雇った方が人件費を浮かせられるため、無理にでも直接雇用を勧めてくるところもあります。そのため雇用条件が合わなかったらきっぱり断ることをおすすめします。

契約社員としての直接雇用の提案を受け入れる場合

もちろんこれはケース・バイ・ケース。全ての企業が悪巧みを考えているわけではありませんが、「契約社員」としての直接雇用を提案してきたのであれば少なくともあなたを「正社員として雇用することを怖がっている会社」ということは間違いありません。つまりは会社としての資金繰り・経営基盤の問題で、ある種の保険をかけている実態です。

だれかが会社を辞めて不足が生じたり、会社の業績が上がって資金に余裕ができるまで「補欠」の段階で留保しておきたい人材としてあなたを雇っています。

なぜ私がここまで契約社員について否定的かというと、私の友人が契約社員としてある企業で働いていて、契約条件を書き換えられ、クビになってしまったことがあるからです。「直接雇用ならクビになることはないだろう」「正社員として雇ってくれることを約束してくれた」とその友人は話していましたが、勤めていた会社の経営状態は決して悪くはなかったものの、直属の上司に嫌われてしまったが故に、クビになってしまったそうです。

もちろんこの実態を労基に提出すればその友人は100%勝つことができるでしょうが、勝ったとしてそこで働き続けることは現実的に難しいでしょう。結果的に次の仕事を見つけて今は仕事をしていますが、契約社員として働いているときは派遣社員以上に不安に駆られながら勤めていたそうです。

派遣社員から契約社員になるということは、「雇用主が変わる」ということになります。あなたが思っている以上に派遣会社はあなたを守ってくれる存在であり、そこから離れて全く新しい親元に行くというのは、おいそれと簡単に承諾してはいけないことなのです。就職活動、転職活動として長く勤めるつもりで、その企業を今一度よく調べ提案を受け入れるか否か考えるようにして下さい。

目的から派遣会社を探す